近年「こころの時代」といわれます。こころの病気を経験する方は増えており身近なものとなっています。また、体の病気にかかった場合も、こころの悩みを覚えることが少なくありません。しかし、こころの病気・悩みは今まで見過ごされ適切な医療が提供されていませんでした。治療の進歩により、こころの病気は以前より治りやすいものとなっています。早期に受診・治療して充実した日々を取り戻していただければと思います。また、今世紀は「脳の世紀」といわれ、脳についての研究が日々進歩しています。新しい脳の検査や治療法が開発され、こころの病気にも役立つようになっています。
熊本県で唯一の特定機能病院であるいわゆる総合病院の神経精神科です。当科では、一般的な精神神経疾患の治療に加えて、認知症、児童思春期疾患、成人神経発達症、ニューロモデュレーションの専門外来を開設しています。精神科医、看護師、薬剤師、心理士、作業療法士、精神保健福祉士が連携して患者さんを多元的に理解し治療を行う「チーム医療」を行っています。こころの病気だけでなく、身体疾患をもつ患者さんの体とこころの病気の治療を同時に行っています。また、脳科学の最先端の情報やエビデンスに基づいて、新しい知見・治療法をとりいれて診療を行っています。
●気分障害(うつ病、双極性障害) ●認知症 ●児童・思春期疾患
●統合失調症 ●神経症(パニック障害、強迫性障害、社交不安障害など)
●成人神経発達症 ●適応障害 ●てんかん ●器質性精神疾患(せん妄)など
標準的な精神療法と薬物治療を中心に治療を行います。エビデンスに基づいた標準的なガイドラインをもとに、疾患、状態、個人の状況に応じたオーダーメイドの観点から治療を行います。他に、精神科リハビリテーション、心理士による専門的心理療法、精神保健福祉士による社会資源の利用等の相談も行っています。
診断のため検査を行っています。画像検査は、頭部MRI・CT、脳血流を測定する脳SPECTを行っています。パーキンソン病・レビー小体型認知症の診断の決め手となるDAT-SPECT検査、MIBG心筋シンチグラフィー検査も行っています。他に、血液検査、脳波検査、種々の心理検査(知能検査、性格検査、神経心理検査など)を行っています。認知症・脳炎などの鑑別検査として、髄液検査も行っています。
うつ症状の原因となるうつ病、双極性障害、統合失調症の診断の補助検査です。令和4年1月から当科において保険診療で検査を開始しています。図のような装置を頭部に当て、脳を働かせる課題を行う際の脳の血流量の変化を近赤外光を用いて測定します。この検査のみで診断・治療方針は決定せず、検査結果は他の多くの情報と併せ、総合的に判断いたします。
>> 光トポグラフィー検査について

精神科病棟は50床(開放38床、閉鎖12床)で、他の一般病棟とほぼ同じ間取りの快適な空間で入院生活を送っていただきます。精神療法、精神科作業療法などの精神科リハビリテーション、薬物療法、ニューロモデュレーション治療を組み合わせて、オーダーメード治療を行います。必要に応じて他の診療科と協力し身体治療も含めた全人的ケアを行っています。
他の診療科で外来・入院治療をうけておられる患者さんの精神的ケアの依頼(コンサルテーション)があれば、各診療科と一緒に積極的な治療を行っています。例えば、入院治療中の不眠症、ストレス性の症状、軽い意識障害(せん妄)が生じる場合です。 精神科リエゾンチームにより、精神科医、精神科専門看護師、心理士、精神保健福祉士などのチームで関係する病棟を回診し、多角的な視点で総合的な治療を行います。
がん患者さんとご家族への精神的ケアを積極的に行っています。また、緩和ケアチームとして、専属の精神科医が加わり、看護師、心理士と協働してがん治療中の患者さんの精神的ケアの援助を行っています。
当科では、一般外来に加えて、「成人神経発達症専門外来」、「児童・思春期外来(熊本県発達障がい医療センター指定)」、「認知症専門外来(熊本県基幹型認知症疾患医療センター指定)」、「ニューロモデュレーション専門外来」を開設し、高度な専門医療を提供しています。
18歳以上の自閉スペクトラム症(ASD)が疑われる方を対象に、専門の臨床心理士による詳細な問診・心理検査を行い、ASDの確定診断、ADHD症状・PTSD症状・感覚過敏などの周辺症状の抽出を行います。未診断のまま成人期まで悩みを抱え、「どうして私だけこんなつらい思いをしなければならないのだろう」と苦しんでこられた方は少なくありません。神経発達症は個人差が大きく、一人ひとり異なる特性を理解することが重要です。当専門外来では、研究参加にご協力いただける場合、ADOS-2を含む網羅的な心理検査、脳波検査、頭部MRI検査などを無償で実施し、得られた検査結果はスコア化のうえ、冊子にまとめてご本人と紹介元医療機関へ丁寧にフィードバックいたします。これまでに400名以上の方へフィードバックを実施しており、特性の理解が、ご自身の過去・現在・未来を見つめ直す一助となるよう支援しております。
中学生以下のお子さんを対象に、気分の落ち込み、不安、いらいら、不登校、発達特性、対人関係のつまずきなど、成長・発達に伴うさまざまな心の悩みに対応します。当院は熊本県より発達障がい医療センターに指定されており、児童精神科医を中心に、精神保健福祉士・作業療法士・心理士・看護師などが連携して行います。必要に応じて学校や地域機関とも協力し、お子さんの状況に合わせたきめ細かな支援を提供いたします。
認知症が疑われる方や物忘れが気になる方を対象とした外来です。当院は熊本県より基幹型認知症疾患医療センターに指定されており、当科・脳神経内科・脳神経外科・画像診断治療科などが連携し、診療科横断型のチーム医療を提供しています。必要な検査(心理検査・脳画像検査・血液検査等)を総合的に行い、認知症の診断、生活上の困りごとの相談、家族支援まで含め、多角的な支援を行います。また、アルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬を含む最新治療も導入し、より個別性の高い医療を提供しています。
うつ病などでお悩みの方を対象とし、当科ではデバイスを用いて脳を刺激する治療(ニューロモデュレーション) を専門的に行っております。難治性うつ病に対する rTMS療法(反復経頭蓋磁気刺激療法) や再発予防を目的とした mTMS-D(維持反復経頭蓋磁気刺激療法) を積極的に実施しているほか、総合病院の特徴を生かして麻酔科と連携した 修正型電気けいれん療法(mECT) も行っており、患者さんの症状やご希望に応じて最適な治療法を一緒に検討しサポートいたします。
近年の脳科学の進歩により、デバイスを用いて脳を刺激する治療法が開発され、、ニューロモデュレーション治療と呼ばれています。保険診療で認められているものは、反復経頭蓋刺激療法(rTMS)と修正型電気けいれん療法(ECT)があり、当科では両者の治療を保険診療下で行っています。また、当科では、施設認定をうけて、難治性統合失調症の唯一の治療薬であるクロザピンによる治療を行っています。
うつ病患者さんの左前頭部の血流低下が多いことから、その部分に磁気の刺激を行い、回復を得ることがこの治療法の原理です。2019年に日本で保険診療が開始となりました。薬物療法の効果が乏しい、難治性の中等度のうつ病患者さんが対象となり、安全性が非常に高く副作用はほとんどありません。最新のNeuroStar TMS治療装置を用いて、当院では約2か月間(最大30回)の急性期入院治療となります。
>> rTMSについて
急性期のrTMS治療によりうつ症状改善後、再発する場合も少なからずあり、再発予防のためその効果を維持することが次のステージとして重要です。国内外の研究では、維持的にrTMSを行うことでうつ病の再発予防に繋がることが報告されています。しかしながら本邦では、保険適応によるrTMSは急性期治療のみに制限され、維持的にrTMSを行うことができません。そのような現状を何とかしたいと考え、当院では医師主導臨床研究への参加同意を頂いた上で、先進医療Bとして1年間の維持rTMS療法を提供できる体制を作っています。半年間は毎週・更に半年間は2週毎に、NeuroStar TMS治療装置を用いて、計40回の治療を受けることができます。
>> mTMS-Dについて

苦痛の強い重症うつ状態などの迅速な治療には最も効果的な治療手段の一つです。脳にダイナミックな活性化が生じる切り札的な治療法です。原法は以前からありますが、安全性の高いパルス波治療器を使用し、麻酔科の協力のもと麻酔下で行う「修正型電気けいれん療法」という新しい方法で行っています。また、エビデンスに基づいたアルゴリズムに沿って実施していますので、有効性と安全性が高く、副作用が少ないことが特徴です。主として気分障害(うつ病、双極性障害)、統合失調症、パーキンソン病関連疾患などを対象に高い改善率を示しています。
>> ECTについて
クロザピン(商品名:クロザリル)は、今まで複数の抗精神病薬による治療を受けてきたにもかかわらず、症状が十分に良くならなかった統合失調症の患者さんに対して、 効果があることが世界で唯一認められた薬です。決められた基準を満たした病院・医師により、副作用が生じないような厳密なプロトコールで治療を行っています。
>> クロザピンについて
当科では、一般外来に加えて、「児童・思春期外来(熊本県発達障がい医療センター指定)」、「認知症専門外来(熊本県基幹型認知症疾患医療センター指定)」、「成人神経発達症専門外来」、「ニューロモデュレーション専門外来」を開設しています。入院については50床の病棟を備えており、身体合併症を有する患者さんや、精神疾患の急性期症状でお困りの患者さんを対象としています。また、救急外来との連携、他の診療科からのコンサルテーション・リエゾン、緩和ケアにも力を入れており、精神科救急や急性期治療、身体合併症を伴う患者さんへの対応を中心に、24時間体制で患者さんを受け入れることにより、県内の精神科医療の最後の砦としての役割を担っています。
現在、外来診療を再開しており、ご希望の日に受診いただけます。さらに、緊急の患者さんの受け入れも可能であり、妊娠中の方や透析患者さんなど身体合併症をお持ちの方に加え、摂食障害の患者さんについても対応しております。
当院は、初診・再診ともに完全予約制となっております。初診で受診を希望される方は、原則としてかかりつけ医(精神科・心療内科に限らず、どの診療科でも可)からの診療情報提供書をご用意いただき、事前にご予約(☎096-373-5973:外来予約センター)をお願いいたします。
月
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金
(令和7年10月10日現在)
外来予約のご案内
●外来診療は初診・再来ともに完全予約制に移行しております。予約なしの受診時には長時間お待たせする可能性がございます。初診の予約
●かかりつけ病院からの紹介によるものを原則としています。再来の予約
●外来受診時に次回の予約を行っております。また予約センターへ電話での申し込みも可能です。| 業務時間 | 午前8時30分〜午後5時15分(土・日・祝祭日及び年末年始は除く) |
|---|---|
| TEL | 096-373-5973 |
| FAX | 096-373-5719 |
| yoyaku@kuh.kumamoto-u.ac.jp | |
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